中島理論で見るGIレースの勝ち馬(1995年編)

(父)フジヤマケンザン
  • 鹿毛
  • 1988.4.17生
  • 早来・吉田牧場生産
  • 馬主・藤本龍也氏
  • 栗東・森秀行厩舎
フジヤマケンザンの4代血統表

ラッキーキャスト
鹿毛 1979.5.20
種付け時活性値:0.00
マイスワロー
鹿毛 1968.2.22
Le Levanstell
鹿毛 1957
Le Lavandou 1944
Stella's Sister 1950
Darrigle
鹿毛 1960
Vilmoray 1950
Dollar Help 1952
タイプキャスト
鹿毛 1966.4.10
Prince John
栗毛 1953
Princequillo 1940
Not Afraid 1948
Journalette
鹿毛 1959
Summer Tan 1952
Manzana 1948
ワカスズラン
鹿毛 1982.4.20
仔受胎時活性値:1.25
コントライト
鹿毛 1968.2.18
種付け時活性値:1.25
★Never Say Die
栗毛 1951
Nasrullah 1940.3.2
Spring Grass 1944
Penitence
鹿毛 1961
★Petition 1944
Bootless 1951
オキワカ
栗毛 1972.3.27
仔受胎時活性値:0.25
リマンド
栗毛 1965
種付け時活性値:1.50
Alcide 1955
Admonish 1958
ワカクモ
鹿毛 1963.3.12
仔受胎時活性値:2.00(0.00)
カバーラップ二世
黒鹿毛 1952.3.9
種付け時活性値:0.50
丘高(競走名:クモワカ)
鹿毛 1948.5.2
仔受胎時活性値:1.50
フジヤマケンザンの4代血統構成&4代父系の活性値&4代父系の分枝状況
母父 祖母父 曾祖母父
ラッキーキャスト
(Djebel系)
コントライト
(Never Say Die系)
リマンド
(Blandford系)
カバーラップ二世
(Hyperion系)
父の活性値 母父の活性値 祖母父の活性値 曾祖母父の活性値
0.00
(8歳時交配)
1.25
(13歳時交配)
1.50
(6歳時交配)
0.50
(10歳時交配)
父の分枝状況 母父の分枝状況 祖母父の分枝状況 曾祖母父の分枝状況
Herod〜Tourbillon系 Birdcatcherの13代孫 Birdcatcherの12代孫 Whaleboneの12代孫
フジヤマケンザンのB&B理論的総括
8代残牡先祖数 4代血統構成
(資質固定指数)
潜在能力値 少ない先祖etc
5/128 E  A  F  C
(0.25)
1.25 ラッキーキャスト
カバーラップ二世
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 何番仔?
リマンド
(Warning)
5.00 or 3.00 近親テンポイント
(No.3 星若系)
初仔

潜在能力値は数値が少ないほど大きいことを示しています。

[Notes]

『香港表記は富士山』フジヤマケンザン。日本で育まれた血統馬が、日本人スタッフ管理により、史上初めて海外の国際重賞(GII)を制しました。1995年12月10日、第9回香港国際カップにおける快挙達成でした。フジヤマケンザンの鞍上は蛯名正義騎手、所属は栗東・森秀行厩舎、オーナーは藤本龍也氏、生産は早来・吉田牧場。まさに日本人の和が作り出した海外重賞制覇でした。レースの2着には米国馬Ventiquattorofogli、3着には香港馬Jade Ageが入りました。なお、フジヤマケンザンの走破時計1800m1分47秒0は、香港・シャティン競馬場のコースレコードでした

フジヤマケンザンの4代血統構成は、『Djebel系×Never Say Die系×Blandford系×Hyperion系』となります。非Northern Dancer、非Native Dancerを積み重ねた内国産血統馬。父ラッキーキャストは競走歴がない不出走馬。つまりは超マイナー種牡馬です。同馬は、吉田牧場が輸入した2頭の名馬の直仔です。その父マイスワローは、2歳時のローベル・パパン賞(現仏GII、往時はれっきとしたGI級)ではMill Reefを2着に下しています。そのローベル・パパン賞の他にモルニ賞(仏GI)、サラマンドル賞(仏GI)、グラン・クリテリウム(仏GI)と仏2歳競馬4冠を制して、欧州競馬史上に残る最強2歳馬となりました。そして母タイプキャストは、1972年の米国最優秀古馬牝馬。マンノウォーS(現GI)、ハリウッド招待H、サンセットH(現GII)など57戦21勝、2着12回、3着9回(!)の成績を誇ります。タイプキャストはラッキーキャストの半姉として、カバーラップ二世との間に1980年の天皇賞・秋馬プリテイキャストを輩出しています−吉田牧場は、タイプキャストをしかる後に米国へ返されたそうです−。フジヤマケンザンの4代血統構成に用いられているラッキーキャスト、コントライト、リマンド、カバーラップ二世は、いずれもがマイナーな競走歴しか持たない種牡馬たちでした。ラッキーキャストは前述の通り不出走。コントライトは愛国で2勝。リマンドは6勝馬ですが、主な勝ち鞍がチェスターヴェイス(現英GIII)という成績でした。カバーラップ二世はJRA2勝。なお、フジヤマケンザンの4代血統構成馬の活性値は、『0.00、1.25、1.50、0.50』とすべて別数値になります。

フジヤマケンザンの牝系は、3号族星若系。母ワカスズランは未勝利。初仔としてフジヤマケンザンを産みました。祖母オキワカは6勝馬。その主な産駒にきさらぎ賞を勝ち日本ダービー&皐月賞で2着したワカテンザン、中央で朝日チャレンジカップを繰り上がり勝利した後に笠松の名馬となったワカオライデン−同馬は地方の名種牡馬となりライデンリーダーなど良駒多数−、東海大賞典を勝ったワカポイントがいます。ワカスズランはワカオライデンの1歳年下の妹になります。曾祖母ワカクモは18戦11勝。主な勝ち鞍は桜花賞(現GI)、小倉記念(現GIII)。ワカクモは8歳時の交配でオキワカを出しました。そして、9歳時の交配で産み出したのが、『アイドル』テンポイント。同馬は18戦11勝。天皇賞・春(現GI)、有馬記念(現GI)、阪神3歳S(現阪神3歳牝馬S、GI)、スプリングS(現GII)、京都記念(現GII)、京都大賞典(現GII)、鳴尾記念(現GIII)、東京4歳S(現共同通信杯、GIII)と重賞8勝。同馬は明け5歳の緒戦として選んだ日経新春杯(現GII)で故障発生、43日後の3月5日に蹄葉炎のために逝去しました。いまでも、吉田牧場にあるお墓に献花、線香が絶えることはないそうです。ワカクモが13歳時交配の産駒にテンポイントの全弟となるキングスポイント。同馬は平地では1勝でしたが、障害戦で才能が花開きました。中山大障害を2勝、阪神障害Sを3勝など障害通算18戦14勝。若き日の小島貞博騎手のお手馬でもありました−今でこそミホノブルボンの小島騎手ですが、昔は障害の名手としても鳴らしていらっしゃいました−。同馬は7歳時の中山大障害・春で故障発生、兄の後追いをするかのように、レース中の故障によりこの世を去りました。ワカクモ、テンポイント、キングスポイント。いずれも18戦目が競走馬としての最後のレースとなりました−キングスポイントは障害の18戦目ですが−。ワカクモが14歳時交配の産駒にイチワカ。その産駒に札幌日刊スポーツ杯(OP)、キャピタルS(OP)を勝ったキオイドリームがいます。

日本人の和によって作り出された海外国際重賞制覇。その和の中心にいらっしゃった方が、まだこの文章には登場されていません。その和の中心にいらっしゃった方とは、故・戸山為夫調教師です。森秀行調教師が戸山厩舎の後を受け継ぎフジヤマケンザンの管理をなされましたが、オーナーの藤本龍也氏、生産者の吉田牧場との元々のつながりは戸山師にありました。戸山師というと「スパルタ調教」ばかりが目立ってあらわされることが多いのですが、人の和をつくることの大事さを真に知っていらした方だと思います。そうでなければ、最晩年にミホノブルボンレガシーワールド、フジヤマケンザン、ドージマムテキという活躍馬たちを立て続けに輩出することは出来なかったでしょう。世間一般では「良血」と呼ばれない彼らは、自分を見初めてくれた戸山師の愛情に報いるかたちで、一生懸命に走っていたのだと思います。馬にも人にも心底の愛情を注ぐ人、戸山為夫調教師。きっと、そうであったのだろうと思います。

[余談]
フジヤマケンザンの曾祖母父となるカバーラップ二世については、石塚英五郎氏の輸入買い付け馬であるという内容の記述が『血とコンプレックス』内にあります。そして競走成績については、吉田重雄氏(吉田牧場・場主)によると「走らせないまま種牡馬にした」ということです。どれが正解なのでしょうか?

[中島理論で見るGIレースの勝ち馬(1995年編)]  目次へ戻る

2000〜2008  オオハシ  colorfulmelody.nakajima@gmail.com