中島理論で見るGIレースの勝ち馬(1996年編)

[外]シングスピール
  • 鹿毛
  • 1992.2.25生
  • 愛国・シェイク・モハメド生産
  • 馬主・シェイク・モハメド
  • 英国・M・R・スタウト厩舎
シングスピールの4代血統表
In the Wings
鹿毛 1986
種付け時活性値:1.25
Sadler's Wells
鹿毛 1981.4.11
Northern Dancer
鹿毛 1961.5.27
Nearctic 1954.2.11
Natalma 1957.3.26
Fairy Bridge
鹿毛 1975.5.4
Bold Reason 1968
Spacial 1969
High Hawk
鹿毛 1980
Shirley Hights
鹿毛 1975
Mill Reef 1968.2.23
Hardiemma 1945
Sunbittern
芦毛 1970
シーホーク 1963.3.16
Pantoufle 1964
Glorious Song
鹿毛 1976
仔受胎時活性値:1.75
<加米17勝。重賞12勝>
[母の初仔]
Halo
黒鹿毛 1969.2.7
種付け時活性値:1.50
Hail to Reason
黒鹿毛 1958
Turn-to 1951
Nothirdchance 1948
Cosmah
鹿毛 1953.4.4
★Cosmic Bomb 1944
Almahmoud 1947 ♀
Ballade
黒鹿毛 1972
仔受胎時活性値:0.75
<米2勝>
[母が不受胎後の初仔]
Herbager
鹿毛 1956
種付け時活性値:1.75
Vandale 1943
Flagette 1951
Miss Swapsco
黒鹿毛 1965
仔受胎時活性値:1.50
<米9勝。アシュランドS(現GI)勝ち>
Cohoes
鹿毛 1954
種付け時活性値:0.50
Soaring
栗毛 1960
仔受胎時活性値:1.00
シングスピールの4代血統構成&4代父系の活性値&4代父系の分枝状況
母父 祖母父 曾祖母父
In the Wings
(Northern Dancer系)
Halo
(Hail to Reason系)
Herbager
(Son-in-Law系)
Cohoes
(Blandford系)
父の活性値 母父の活性値 祖母父の活性値 曾祖母父の活性値
1.25
(5歳時交配)
1.50
(6歳時交配)
1.75
(15歳時交配)
0.50
(10歳時交配)
父の分枝状況 母父の分枝状況 祖母父の分枝状況 曾祖母父の分枝状況
Nearcoの4代孫 Nearcoの4代孫 Whaleboneの12代孫 Birdcatcherの10代孫
シングスピールのB&B理論的総括
8代残牡先祖数 4代血統構成
(資質固定指数)
潜在能力値 少ない先祖etc
16/128 A  A  C  F
(0.50)
8.00 父初年度産駒
Cohoes
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 何番仔?
Herbager
(Ballade)
5.00 母米古牝馬王者
(No.12)
8番仔
(2年連続流産後)

潜在能力値は数値が少ないほど大きいことを示しています。

[Notes]

『世界を駆ける挑戦者』シングスピール。歴史を重ねて第16回となった国際招待競走ジャパンカップ。圧倒的1番人気は凱旋門賞を5馬身差で逃げ切ったエリシオ(1993.1.24)、続く2番人気が3歳秋にして天皇賞馬となったバブルガムフェロー(1993.4.11)、3番人気が夏に"キング・ジョージ"を制していたペンタイア(1992.4.12)、そして4番人気が10戦連続連対中のブリーダーズカップ・ターフ2着馬シングスピールでした。

レースはカネツクロス(1991.3.18)の先導で始まりました。的場均騎手の青い紐手綱に御された鹿毛馬がスーっと先頭に立つと、外からはO・ペリエ騎手のエリシオが2番手、内からは松永幹夫騎手のファビラスラフイン(1993.4.13)が3番手位置につきました。岡部幸雄騎手のバブルガムフェローは外からエリシオをマークする形で4番手、最内からR・クィン騎手のストラテジックチョイス(1991.3.4)が5番手、少し離れてL・デットーリ騎手のシングスピールは6番手の位置にいました。シングスピールの後ろの馬群中央にはM・ヒルズ騎手のペンタイアが控えていました。

淀みない流れでレースは進み、1000mの通過が59秒4のラップ。余談となりますが、この年より後年のジャパンカップのラップを見ると、軒並みスローペースになってしまっています。2000年のテイエムオペラオーが勝ったレースに至っては、1000mの通過が1分3秒0(!)。府中の芝2400mは、前半戦から厳しい戦いであってほしいと願うのは私だけではないでしょう。個人的には、ジャパンカップは遅くとも2分24秒台の決着であってほしいです。まま、スピードだけが馬の強さを表す指標でないことは分かっているのですけれど……。閑話休題、第16回ジャパンカップに話を戻しますと、レースは前半からほぼ同じ体列で流れて行き、あっという間に府中名物「500mの直線」を迎えました。

カネツクロスの逃げが鈍り、外から押しながらストラテジックチョイス、その内を馬なりでエリシオ、そのまた内からファビラスラフインが伸びようとしていました。エリシオとファビラスラフインの間には1頭分程のスペースが空いていて、その狭い間隙を突いたのがシングスピールでした。エリシオをマークしていたバブルガムフェローはまったく伸びず、ペンタイアの差し脚も前を脅かすほどのものではありません。残り200m地点で4頭が横並びになったかと思うと、デットーリ騎手は右ムチをふるって激励し、それに応えてシングスピールが鋭く脚を伸ばして先頭に出ました。4コーナーのけやきの向こうあたりから追い出していたにも関わらず、この英国馬は、持てる力を余すことなく全力で駆けました。やはり凄い、英国調教馬!外のエリシオは、内のシングスピールの強襲に驚いたのか思うように伸びず、ストラテジックチョイスとの3着争いに脱落。しかししかし、内の3歳牝馬ファビラスラフインが、恐ろしい粘り腰でシングスピールに詰め寄りました。外の鹿毛の男馬、内の芦毛の女馬。2頭の激しい叩き合い。それをわずかにハナ差制したのは、鹿毛の男馬、シングスピールの方でした。府中の芝2400mの勝ち時計は2分23秒8、上がり3ハロンは36秒2という根性比べの1戦となりました。シングスピールの鞍上ランフランコ・デットーリ騎手、管理された『Sir』マイケル・R・スタウト調教師、オーナーブリーダーであるモハメド殿下。3者ともにジャパンカップ初制覇となりました。レースの2着はもちろんファビラスラフイン、3着はエリシオとストラテジックチョイスが同着となりました。ペンタイアは8着、バブルガムフェローは13着と敗れてしまいました。


シングスピールの4代血統構成は、『In the Wings×Halo×Herbager×Cohoes』となります。Eclipse系を4代重ねた配合ですが、それぞれの活性値が別数値で祖母父Herbagerがネオ異系&最優性先祖となる配合になっています。また、劣勢の直父系Northern Dancer有数値牡馬ではありますが、Sadler's Wellsの系統は比較的活力があるようです。付け加えて、普段は海外のハーレムで走っている馬であり、日本ではチャレンジャーの気持ちで臨めたと考えます。

シングスピールの牝系は、12号族Soaring系。母Glorious Songは加米で17勝を挙げた名牝です。サンタマルガリータ招待H、トップフライトH、スピンスターS、ラカナダSと米GIを4勝、その他米国重賞4勝、加国重賞4勝と合計重賞12勝。加国年度代表馬、米古牝馬王者にも選ばれました。その代表産駒を挙げますと、2番仔グランドオペラ(1984.2.11)は未勝利ながら血統を見込まれて種牡馬入りし、日本に輸入されて1999年のフェブラリーSを制したメイセイオペラ(1994.6.6)の父となりました。3番仔Rahy(1985)はベルエアH(米GII)など英米6勝。半兄に続いて種牡馬となり、その代表産駒はファンタスティックライト(1996)、Serena's Song(1992)など重賞勝ち馬多数。5番仔Rakeen(1987)は英、南アフリカで6勝。南アフリカにおいてアレン・スニジマンS(GII)、O・K・トライアル(GIII)と重賞2勝。詳細は分かりませんが種牡馬として供用されたようです。そして、Glorious Songが2年連続流産後の8番仔がシングスピールとなります。Glorious Song、名競走馬にして名繁殖牝馬ですね。シングスピールの祖母はBallade。その初仔がGlorious Songとなります。そして2年連続不受胎、流産、不受胎後の2番仔がDevil's Bag(1981)。同牡馬は米国で8勝を挙げ、シャンペンS、ローレル・フュチュリティと2歳GIを2勝して米2歳牡馬王者に選ばれました。もちろん種牡馬として供用され、その代表産駒はご存知タイキシャトル(1994.3.23)となります。Balladeの9番仔にSaint Ballado(1989)。同馬はDevil's Bagの全弟となり米国で4勝。アーリントン・クラシック(GII)、シェリダンS(GIII)と重賞2勝を挙げました。もはや繰り返すまでもないですが種牡馬として供用されていて、北米の人気種牡馬となっています。シングスピールの曾祖母はMiss Swapsco。その初仔がBalladeとなります。そして空胎明けの7番仔がDevil's Sister(1983)。同牝馬の娘に、ローズS(GII)など重賞4勝を挙げたヒシナタリー(1993.2.16)がいます。そういえば、この第16回ジャパンカップにはヒシナタリーも出走していましたね。勝ち馬から0秒6差の7着に健闘にしました。Miss Swapscoの10番仔にSecreto's Glory(1987)。同牝馬は加米で2勝を挙げ、シリーンS(加GI)を制しています。なお、シングスピールの4代母となるSoringの別分枝からは、『右回りならば最強』グラスワンダー(1995.2.18)が輩出されました。


シングスピールは翌1997年も現役を続行し、第2回ドバイワールドカップ(現UAEGI)、コロネーションC(英GI)、インターナショナルS(英GI)等を制して芝ダート問わない活躍を見せました。彼の初めてのGI制覇が加国のカナディアン国際S(加GI)でしたから、加国、日本、UAE、英国と4ヶ国を渡り歩いてGIを勝っていったのですね。ジャパンカップ時のエピソードとして、来日直後に輸送熱を出してしまい体調を崩してしまったそうです。それにも関わらず、10日後のレース当日には見事に立ち直っていたその体力と精神力。自分自身に打ち克ったシングスピールにとって、レースに勝つことは簡単なことだったのでしょう。ジャパンカップ当日の馬体重が464kgでしたから、それほど大きな馬ではないのですが、その鋭くかき込む走法で真摯にゴールへ向かう姿、そしてその迫力をVTRで繰り返し見るにつけ、「やっぱり、まだまだ世界は遠いなぁ」と思いました。

名繁殖族ですから種牡馬としても大きな期待を集めているはずです。半兄たちに負けない良駒を送り出してくださいね。

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