ヤマカツスズラン  [ Home >> B&B >> 2000年クラシック牝馬編 ]

2000年のクラシック候補生たちを中島理論的に分析していこうという企画です。
第5回目の今回は阪神3歳牝馬S(GI)勝ち馬、ヤマカツスズラン号を分析してみましょう。

以下の文章中、ヤマカツスズランは本馬と称します。4代血統構成において父は壱、母父は弐、祖母父は参、曾祖母父は四と表します。

注意;ヤマカツスズランは骨折のため、春のクラシックは全休の見込みです。しかし、3歳牝馬チャンピオンに敬意を表してクラシック候補生として分析してみようと思います。


ヤマカツスズラン   牝   栗毛   1997.4.14生   栗東・池添兼雄厩舎   Family No.1-B

[戦績]
阪神3歳牝馬S(GI)、ききょうS(OP)勝ち。2月13日の時点で4戦3勝。

[血統]
父は米国産のジェイドロバリー(1987)。同馬は仏国で3〜3歳時、通算7戦2勝。2歳GIであるグラン・クリテリウム(芝1600m)を勝利しました。同馬は父Mr.Prospector(1970.1.28)の16歳時交配による『0の遺伝』を受けた種牡馬です。社台グループのバックアップもあり、良馬を多数輩出しています。本馬以外の活躍馬に、タイキシャーロック(1992.2.19)、オースミジェット(1994.4.29)、テセウスフリーゼ(1992.5.19)、イブキインターハイ(1992.4.8)、テンパイ(1993.3.31)、ロバリーハート(1993.5.31)等。本馬は父の6年度産駒となり、中央の芝GIレースを初めて勝った産駒となりました。ただし、ジェイドロバリー自身はマイナー種牡馬の域を出ない競走成績でしたが、産駒の活躍もあり種付け頭数が年間100頭以上のブランド種牡馬となってしまいました。牡馬産駒はGIレースに行ってやや甘さを見せてしまいます(例;オースミジェット)。

母はフジノタカコマチ(1985.4.11)。同馬は現役時代、通算13戦3勝。本馬は母の空胎後の5番仔にあたります(母も祖母の不受胎後の産駒です)。牝系は、日本在来牝系のひとつ、フラストレート(1900)系。同馬は明治40年(1907年)に小岩井農場が英国より輸入。100円が現在の1億円に当たると言われるその当時、5000円で輸入された高額繁殖牝馬。本馬はフラストレートの曾孫である第参マンナ(1937.3.11)分枝に属しています。第参マンナ分枝からは浦和桜花賞馬ミネノオウカン(1983)、その直仔である東京大賞典馬ドラールオウカン(1988.5.10)と戸塚記念馬ドラールクラウン(1992.3.24)、北九州記念(GIII)の勝ち馬ニシヤマショウ(1985.4.21)、ダートのオープン特別を4勝したダイカツジョンヌ(1988.3.26)等が出ています。フラストレート系の別分枝からは近年の活躍馬としてウメノファイバー(1996.5.5)、トロットサンダー(1989.5.10、我らが中島氏の配合馬)等が出ています。

本馬の8代残牡先祖数は『12/128』と推定します。父ジェイドロバリーは母方に米国血脈であるNijinsky(1967.2.21)を持つために7代残有数値牡先祖数が多くなってしまうのですが(推定『13/64』)、うまく8代残牡先祖数を減らしました。なお、本馬の7代残牡先祖数は『8/64』と推定します。この数値は繁殖牝馬として良馬を輩出可能な数値と思います。GIレースの意義が『種牡馬(繁殖牝馬)の選定』にあるのならば、7代残牡先祖数が少ない馬は、その繁殖活動に対する本能に突き動かされて好走するとも思います。

本馬の4代血統構成を見ると、壱はジェイドロバリー、弐はコリムスキー(1975.2.19)、参はタマナー(1955.4.13)、四はゲイタイム(1949)です。壱、弐はPhalaris(1913)系に属します。参はTeddy(1913)系の種牡馬。この参(祖母父)の位置にTeddy系の種牡馬を持つ配合パターンが割と良馬を輩出しているように思います。四はHyperion(1930.4.18)の孫でかつての名種牡馬。かの大川慶次郎氏が馬体の美しさを褒め称えたニ冠馬メイズイ(1960.3.13)、第29代日本ダービー馬フエアーウイン(1959)、「鼻の毛1本の差」と言われるほど際どかった第28回日本ダービー2着馬メジロオー(1958)−第28代日本ダービー馬はハクショウ(1958)−等の父です。本馬はNorthern Dancer(1961.5.27)の3×4のインブリードを持ちますが、壱がMr.Prospectorの『0の遺伝』を受けている関係上、Northern Dancerの祖父であるNearco(1935.1.24)の『オレンジ0』化が生じます。ゆえにNorthern Dancerは『ブルー0』化されます。

4代血統構成馬の父系分枝状況に目を向けると、
壱  Phalarisの7代孫
弐  Phalarisの5代孫
参  Bend Or(1877)の9代孫
四  Whalebone(1807)の11代孫

分枝後12代以上の馬は存在せず、ネオ異系マジックは生じません。ゆえに本馬の潜在能力指数は『12』のままです。

本馬の活力の源泉は、母の空胎後の産駒であるということ、7代までで多くの先祖を0化したことの2点と考えます。

本馬の最優性先祖は曾祖母父ゲイタイム(15歳時交配で活性値1.75)です。形相遺伝はゲイタイムの父の母、Rockfel(1935)と判断します。また、本馬の料的遺伝の値は3.00(もしくは5.00)です。祖母コビナタヒメ(1974.5.28)と曾祖母タイムマンナ(1965.3.5)間の料的遺伝の受け渡しが『0.00』なのか『2.00』なのか定かではありませんので、いちおう少なく見積もって3.00としておきます。この数値はオープン馬としては小さく、あまり連戦に向くタイプではありません。GIレースを一生懸命頑張った代償でしょうか、本馬は骨折してしまいました。

[最後に]
池添兼雄調教師は開業1年目からGI制覇という快挙を達成されました。ヤマカツスズランは牝馬クラシック戦線の主役を張る存在だったのですが……。骨折というアクシデントですので、無理をせず、ゆっくりと治して、秋に元気な姿を見せてください。


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