エンゼルカロ  [ Home >> B&B >> 2000年クラシック牝馬編 ]

2000年のクラシック候補生たちを中島理論的に分析していこうという企画です。
第10回目の今回は函館3歳Sの勝ち馬、エンゼルカロ号を分析してみましょう。

以下の文章中、エンゼルカロは本馬と称します。4代血統構成において父は壱、母父は弐、祖母父は参、曾祖母父は四と表します。


エンゼルカロ   牡   鹿毛   1997.4.7生   北海道・林正夫厩舎→栗東・南井克巳厩舎   Family No.1-O

[戦績]
函館3歳S(GIII)1着、札幌3歳S(GIII)3着、ファンタジーS(GIII)3着。4月6日の時点で8戦4勝、3着2回(中央、地方含めて)。

[血統]
父は米国産のスターオブコジーン(1988.4.5)。同馬は米国、英国、仏国、そして日本の中央で出走し、アーリントン・ミリオン(米GI)、マンノウォーS(米GI)、マンハッタンH(米GII)、シーザース国際(米GII)、サンマルコスH(米GII)、サンガブリエルH(米GIII)、ケルソH(米GIII)、チョイスH(米GIII)を勝ち重賞8勝(通算38戦14勝)。5歳時にはジャパンカップに出走し5着。本馬は父の2年度産駒となります。父の他の活躍産駒に、京成杯(GIII)の勝ち馬マイネルビンテージ、すずらん賞(OP)の勝ち馬マイネルアステール(1997.3.6)等。

母はヤマフノーザリー(1986.3.6)。現役時代は通算9戦2勝。本馬は、母の不受胎後の6番仔になります。初仔、空胎後の産駒に準ずる形で、不受胎後の産駒も母体の充実を受け継ぐと私は考えます。牝系は、日本の名牝系であるキーンドラー(1898)系。同牝馬は明治40年(1907年)に小岩井農場が英国より輸入。100円が現在の1億円に当たると言われるその当時、6000円で輸入された高額繁殖牝馬。本馬はキーンドラー系第四キーンドラー(1913)分枝、キタノリュウ(1965.5.13)系に属します。「キタノリュウ」と聞くと、オールドファンの方はあの名牝のお母さんという事を思い出されるかもしれません。「テン良し、中良し、終い良し、付け加えては超グラマー」と杉本清アナウンサーに言わしめた、あの名牝テスコガビー(1972.4.14)のお母さんがキタノリュウです。テスコガビーはその父テスコボーイ(1963.1.??)の『0の遺伝(8歳時交配)』を受けた名馬です。本馬の祖母テスコエンゼル(1977)は、テスコガビーの全妹にあたります。他の近親に東京大賞典馬トドロキヒリュウ(1974)、ダイヤモンドS(GIII)勝ちのトレードマーク(1982.5.4)等。

本馬の8代残牡先祖数は『10/128』と推定します。4代血統構成を見ると、壱はスターオブコジーン、弐はノーザリー(1972.4.29)、参はテスコボーイ、四はモンタヴァル(1953.1.28)です。本馬の生年月日(1997.4.7)と壱の生年月日(1988.4.5)とを照らし合わせると、本馬は父から『0の遺伝(8歳時交配)』を受けていると考えます。壱、弐、参はNearco(1935.1.24)系の近親馬たち。特に壱と参はNasrullah(1940.3.2)系の分枝馬。しかしながら、壱の『0の遺伝』により、何の弊害も無く先祖馬を減らし、種の純粋化を図っています。四はBlandford(1919.5.26)系。現代では当たり前となってしまったPhalaris(1913)系の4段付けではなく、四の位置にモンタヴァルを配していることにより、一本調子の配合になることを回避しています。

4代血統構成馬の父系分枝状況に目を向けると、
壱  Nasrullahの5代孫
弐  Nearcoの3代孫
参  Nasrullahの孫
四  Birdcatcher(1833)の10代孫

4代いずれもがBirdcatcher分枝系に属する馬です。分枝後12代以上の馬は存在せず、ゆえに異系マジックは生じません。本馬の潜在能力指数は『10』のままです。

本馬の活力の源泉は、父より直接受けた『0の遺伝』と、牝系の底力にあると考えます。

本馬の最優性先祖は母父ノーザリー(13歳時交配で活性値1.25)です。形相遺伝はノーザリー内のSanlinea(1947、英国産牝馬)と判断します。同牝馬の先祖馬よりヨーロピアンタイプの『形』が出ていると思いますので、馬場の広い競馬場がより合うと考えます。また、本馬の料的遺伝の値は1.50(もしくは3.50)です。祖母テスコエンゼル(1977)と母ヤマフノーザリー(1986.3.6)間の活性値の受け渡しが『0.00』で行われたか『2.00』で行われたか定かではありません。いずれにせよ、小さな料的遺伝の値です。遠征競馬となったファンタジーS、阪神3歳牝馬S(GI)では疲れがあったのかもしれません。充分に間隔を取ったローテーションで各レースに臨んで欲しいと思います。転厩して、新規開業の栗東・南井克巳厩舎所属になっていましたね。すみません、忘れていました。

[最後に]
テスコガビーという牝馬を「史上最強牝馬」とされるオールドファンの方の数の多さに驚きます。戦績を見てもうなずけます。めちゃくちゃやん、オークス8馬身差勝ちって。そりゃ桜花賞で「後ろからはなんにも来ない」って言われますわ、1975年当時で1分34秒9(!!)の勝ち時計。本当にケタ違いだったのでしょう。同牝馬の血を残せなかったことは、日本の馬産界にとって残念な出来事だったと思います。

エンゼルカロも、偉大な近親馬と同様に、父から直接『0の遺伝』を受けることにより、日本の名牝系であるキーンドラー系に活力を吹き込みました。近年「小岩井の牝系」に属する馬の活躍が顕著です。私も中島理論使いとして、エンゼルカロには頑張って欲しいと願います。

[追記]
うーん、いまひとつ体調が戻りきっていないようです……。料的遺伝の弱小さが出てしまっているのでしょうか。身体がパンとしてくればもっともっと走れる馬だと思うのですが。−2000年4月6日、追記−


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