ダイタクリーヴァ  [ Home >> B&B >> 2000年クラシック牡馬編 ]

2000年のクラシック候補生たちを中島理論的に分析していこうという企画です。
第7回目の今回はシンザン記念の勝ち馬、ダイタクリーヴァ号を分析してみましょう。

以下の文章中、ダイタクリーヴァは本馬と称します。4代血統構成において父は壱、母父は弐、祖母父は参、曾祖母父は四と表します。


ダイタクリーヴァ   牡   栗毛   1997.3.24生   栗東・橋口弘次郎厩舎   Family No.8-G

[戦績]
スプリングS(GII)、シンザン記念(GIII)、北九州3歳S(OP)勝ち。4月6日時点で5戦4勝、2着1回。

[血統]
父はフジキセキ(1992.4.15)。朝日杯3歳S(GI)、弥生賞(GII)、もみじS(OP)勝ち等(通算4戦4勝)。同馬はその父サンデーサイレンス(1986.3.25)の初年度産駒であり、最初のGI勝ち馬となりました。クラシックの前哨戦である弥生賞でも圧勝しましたが、皐月賞を前に屈腱炎を発症してしまい引退、種牡馬入りしました。本馬は父の2年度産駒(4歳時交配)で、初の重賞勝ち馬となります。

母はスプリングネヴァー(1992.5.23)。現役時代は3戦0勝。本馬は母の初仔となります。牝系はスタイルパッチ(1950)系。同牝馬は、1952年に米国より競走馬として輸入。3〜5歳時41戦9勝。石塚栄五郎氏−小岩井農場のブレインを勤めた後、財団法人日本軽種馬登録協会の要職についた人物−が昭和27〜28年(1952〜1953年)に輸入した馬の1頭。本馬はスタイルパッチ系ミスナンバイチバン(1959)分枝に属します。近親にダイタクヘリオス(1987.4.10、本馬の伯父)、ダイタクテイオー(1992.4.26)、カブラヤオー(1972.6.13)、ミスカブラヤ(1976)等。近年でも活力のある日本在来牝系のひとつと言えます。

本馬の8代残牡先祖数は『18/128』と推定します。4代血統構成を見ると、壱はフジキセキ、弐はサクラユタカオー(1982.4.29)、参はネヴァービート(1960)、四はハロウェー(1940)です。弐のサクラユタカオーは自身の母父にネヴァービートを、曾祖母父にハロウェーを持っています。つまり、本馬は母方にネヴァービートの3×4、ハロウェーの4×6のインブリードを持っていることになります(換言すれば、本馬の母スプリングネヴァーはネヴァービートの2×3、ハロウェーの3×5を持っているということになります)。しかしながら、弐の活性値は0.25(9歳時交配)と低く、その母父であるネヴァービートの活性値0.25を掛け合せると、0.0625という極めて0に近い数値となります。つまり、ネヴァービートは準0化されます。そして、ハロウェーは弐の曾祖母であるスターロッチ(1957)に16歳時交配の0の遺伝を与えています。よって、本馬の持つネヴァービートとハロウェーのインブリードは、何の弊害も無く、先祖の数を減らすことに成功しています。この強烈なインブリードのため、本馬の母スプリングネヴァーの7代残牡先祖数は『5/64』まで減ります。なお、本馬の8代までに残る非0化牡先祖の総数は『52/255(推定)』という値です。8代までに存在する牡先祖の約80%を0化したことにより、本馬のもつ種の純粋性は、より強固なものになりました。

4代血統構成馬の父系分枝状況に目を向けると、
壱  Nearco(1935.1.24)の6代孫  (Phalaris(1913)の8代孫)
弐  Nasrullah(1940.3.2)の3代孫  (Phalarisの6代孫)
参  Nasrullahの孫  (Phalarisの5代孫)
四  Phalarisの孫

上記した通り壱、弐、参、四と全てがPhalarisからの分枝馬たちです。分枝後12代以上の馬は存在せず、ネオ異系マジックは生じません。ゆえに本馬の潜在能力指数は『18』のままです。潜在能力指数はやや大きな値となってしまいましたが、壱のフジキセキ内の先祖にReigh Count(1925)、Papyrus(1920)、Pilate(1928)、Balladier(1932)、On Watch(1917)、Equipoise(1928)等の米国血統が潜入しているため、それほど気にする必要は無いと思います。なお、本馬の7代残牡先祖数は『10/64』と推定します。フジキセキ産駒としては、よく先祖を減らしている方だと思います。

本馬はNorthern Dancer(1961.5.27)およびNative Dancer(1950.3.27)の血を持っていません。イニシヤチヴホースとしての条件を備えていると思います。しかし、4代血統構成がPhalaris系の4段付けですので、やや一本調子の競馬になるやも知れません。曾祖母父にハロウェーという古い血が導入されているのはプラスです。父フジキセキは競走時に頂点を極める前に引退した馬ですから、向上心を産駒に伝えることができると思います。しかし、直系祖父サンデーサイレンスの系統が、あまりにも加速度的に増殖しはじめていることが気がかりです。初仔の活力が、飽和状態へ向かう直父系に打ち勝つことができるでしょうか。

本馬の活力の源泉は、Northern DancerおよびNative Dancerの血を持たない血統構成、牝系の底力、そして母の初仔ということにあると思います。

本馬の最優性先祖は父のフジキセキ(4歳時交配で活性値1.00)です。形相遺伝は直系祖父サンデーサイレンスと判断した……。うーん、でも栗毛に出ているしなぁ。劣性でも母方のサクラユタカオーの栗毛が出たのでしょうか。『優駿』4月号、P13のダイタクリーヴァの写真を見ていると、サクラユタカオーの形相が出ているように感じます。顔の流星、前後駆の白も似ていますs……−2000年4月6日、追記−

また、本馬の料的遺伝の値は4.75(あるいは2.75)です。4代母スタイルパッチ(1950)から曾祖母ミスナンバイチバン(1959)への料的遺伝の受け渡しが『2.00』か『0.00』のどちらで行われたかは定かではありませんが、近親馬−ダイタクヘリオス、ダイタクカミカゼ(1993.5.26)等−の丈夫さを見ていると、『2.00』で行われたように思います。ここでは『2.00』と判断して、料的遺伝の値は4.75としておきます。この数値はNijinsky(1967.2.21)と同数値です。オープン馬として平均以上の体力があると考えます。

余談となりますが、スタイルパッチ(1950)はその母Style Leader(1933)の16歳時交配生産馬であり、Style Leaderもその母Minuet(1916)の16歳時交配生産馬です。Minuetはその母Fantasque(1908)の7歳時交配生産馬です。狙っていたんですね、石塚栄五郎氏は。

[最後に]
フジキセキが、ホッカイルソー(1992.5.2)の追撃をあっという間に振り切ったあの弥生賞から早5年。もう産駒がクラシックを賑わす存在になる年齢なんですね。ホッカイルソーはまだ現役ですよ……。

私たちに、一瞬だけ、垣間見せてくれたフジキセキのサラブレッドとしての才能。競走馬としては全開とならなかったその才能を、種牡馬としては開花させて欲しいと思います。ダイタクリーヴァは発端となるのでしょうか。そのレース振りに注目したいと思います。

[追記]
スプリングSも「圧勝」でした。皐月賞はフサイチゼノンとの2強対決ということになるのでしょうか。−2000年4月6日、追記−

皐月賞2着、ダービー12着。ダービーは、皐月賞でエアシャカールに競り負けたのが悪かったのでしょうか。鞍上、鞍下ともに苦い敗戦となりました。秋はマイル路線に向かうそうですね。伯父のダイタクヘリオスのように息の長いチャンピオンマイラーになってくださいませ。−2000年7月1日、追記−


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