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ひまわり(7月6日、8月15日生まれの方の誕生花)
as time goes by

幼い頃のあの子。
あの子は男勝りだった。
僕はいつも追いまわされていた。
困ってはいつも、男子トイレに逃げ込んだ。

少し大きくなったあの子。
あの子は変わらず男勝りだった。
けれど、快活な笑顔の下に隠して、
時折、さみしそうな顔を見せることがあった。
さみしそうな顔を見せる理由は?
幼い僕には分からなかった。

だいぶ大きくなったあの子。
人前で絶対に涙を見せなかったあの子が、
なにかの拍子に涙を見せた。
僕は突然、あの子に女の子を意識した。

とても大きくなったあの子。
あの子はひまわりのような笑顔を見せていた。
人前ではその笑顔の花が枯れることはなかった。
けれど、人目の離れたところで、あの子は違う花を見せた。
コスモスのように、悲しそうな顔を見せた。

どっちが本当のあの子なんだろう?
答えが分からないまま、あの子と僕は離れてしまった。

離れてしまったあの子と僕。
あの子は、たまたま町で出会った僕に声をかけてくれた。
変わらぬひまわりのような笑顔だった。
あの子が笑っていて、僕はホッとした。
なぜだか分からないけれど。

それから、時は流れた。
僕は、大人と呼ばれる年齢になった。

夏の暑い日。
街の公園で。
メガネをかけてベンチに腰掛けている僕。
あの子が、
僕の目の前を歩いて通り過ぎていく。
不意に目が合った。
僕は微笑んだ。
お化粧をしている。
とてもキレイになっている。
でも、間違いなくあの子だ。
ふっ、と僕を見るあの子。
僕だと気付いていないようだ。
それでも構わない。
僕は微笑んだ。
彼女は、
素知らぬ顔をして、
僕の目の前を通り過ぎていった。
僕は彼女の後ろ姿を目で追った。
ショートカットだったあの子の髪は、
ロングのストレートになっていた。
彼女は、大人の女性になっていた。

あの子は、彼女になった。
女の子は、女性になった。
つまり、時の過ぎ行くままに。

年年歳歳花相似、歳歳年年人不同――。

けれど、彼女のひまわりのような笑顔だけは、いつまでも枯れませんように。
彼女のひまわりのような笑顔だけは、いつまでも変わりなく咲いていますように。
たとえ、時が過ぎて行っても。

彼女が、僕を忘れてしまっても。



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