2000年前期のGIレースの勝ち馬回顧(その1)

今回は2000年前期のGIレース勝ち馬の中島理論的回顧をしてみようと思います。その1回目はフェブラリーS、高松宮記念、桜花賞、皐月賞の4レースの勝ち馬たちです。

第17回フェブラリーS(ダート1600m) 2月20日 東京 曇・良 勝ち馬 ウイングアロー(勝時計1分35秒6)

ウイングアロー   牡   鹿毛   1995.3.25生   Family No.11-F ウイングアローの4代血統表
父アサティス(1985.3.28)  母サンヨウアロー(1988.4.11)  母の父ミスターシービー(1980.4.7)

父アサティスはNorthern Dancer(1961.5.27)系の種牡馬です。しかし、ウイングアローがアサティスから受けた活性値は9歳時の「0.25」と小さく、さらにアサティスが父Topsider(1974)から受けた活性値は10歳時の「0.50」と小さい数値です。その乗算活性値は「0.25×0.50=0.125」となり、Topsider以前の先祖は『準0遺伝(イエロー0)』となります。ゆえにウイングアローはNorthern Dancerによる活力の減退は生じません。このように準0遺伝を用いて多くの先祖を消却している近年の活躍馬にナリタトップロード(1996.4.4)、マイターン(1995.4.18)などがいます。これらの活躍馬は上手く統領性、闘志を得ることができました。

ウイングアローは母サンヨウアローの初仔となります。馬産界では「初仔の腹つくり」という格言があるように、初産からは大きな仔が出にくいため、最初の仔は軽視されがちです。けれど、実際には若年期の母体の充実を受けた良駒がたくさん輩出されています。近年のGI勝ち馬ではセイウンスカイ(1995.4.26)、サニーブライアン(1994.4.23)、フサイチコンコルド(1993.2.11)、、ミホノブルボン(1989.4.25)などが母の初仔です。

牝系はマーシュメドウ(1956)を日本の基礎繁殖牝馬とする11号族。この牝系から、6勝を挙げ桜花賞でも2着したニットウヤヨイ(1965.3.31)、朝日杯3歳Sを勝ち最優秀2歳牡馬に選出されたミノル(1966.4.4)などが輩出されています。ウイングアローの叔父にアルゼンチン共和国杯(GII)、ダイヤモンドS(GIII)2回などを勝ったユーセイトップラン(1993.4.25)がいます。ウイングアローがフェブラリーSを勝利する1週間前の2月13日に、ユーセイトップランが自身2度目のダイヤモンドS勝ちを収めました。そんな牝系近親馬の活躍の連動を目の当たりにして、「やはり牝系の勢いを無視するわけにはいかないなぁ」と思いました。

ウイングアローの4代血統構成&4代父系の活性値&4代父系の分枝状況
母父 祖母父 曾祖母父
アサティス
(Northern Dancer系)
ミスターシービー
(Princely Gift系)
ネヴァービート
(Never Say Die系)
ヒンドスタン
(St.Simon系)
父の活性値 母父の活性値 祖母父の活性値 曾祖母父の活性値
0.25
(9歳時交配)
1.75
(7歳時交配)
1.00
(20歳時交配)
1.00
(20歳時交配)
父の分枝状況 母父の分枝状況 祖母父の分枝状況 曾祖母父の分枝状況
Nearcoの4代孫 Nasrullahの4代孫 Nasrullahの孫 Eclipseの14代孫
ウイングアローのB&B理論的総括
8代残牡先祖数 マジック数 潜在能力指数 闘志
9/128 1 6.75 Northern Dancer準0化
Native Dancer準0化
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 何番仔?
ミスターシービー
(アドミラルバード)
4.75 活力あり
(No.11-F)
初仔

※潜在能力は数値が少ないほど大きいことを示しています。

第30回高松宮記念(芝1200m) 3月26日 中京 曇・良 勝ち馬 キングヘイロー(勝時計1分8秒6)

キングヘイロー   牡   鹿毛   1995.4.28生   Family No.8-H キングヘイローの4代血統表
父ダンシングブレーヴ(1983.5.11)  母グッバイヘイロー(1985)  母の父Halo(1969.2.7)

父ダンシングブレーヴはNorthern Dancer系の種牡馬です。キングヘイローが持つNorthern Dancerのポイント(乗算活性値)は「1.640625」で、直父系にNorthern Dancerが有数値で残っています。最近ふたたび「直父系Northern Dancer有数値の牡馬」がGIレースで勝利を収めています。しかし、それでも相対的には活力が減退していることは否めず、キングヘイローは1200mのレースでGIホースの栄誉を得ることとなりました。皐月賞で2着、菊花賞で5着、有馬記念で6着しているように、決して距離に融通性が無い訳ではないの思うのですが……。中島理論とMの法則を用いて鋭い競馬予想をなさっているWebサイト『サラブレッドデータ・インデックス』の管理者であるHN・オカ様によりますと、活力が減退している父系は適性距離が短距離へ移行していくそうです。

母グッバイヘイローはCCAオークス(米GI)、マザーグースS(米GI)、ケンタッキーオークス(米GI)などGIレース7勝の名牝です。現役引退後は日本で繁殖牝馬入りしました。初産から3年連続でナスルエルアラブ(1985.3.27)を付けられましたが、いずれの産駒も未勝利に終わっています。そしてグッバイヘイロー4番目の仔としてキングヘイローを出産しました。

牝系は5代母Lady Be Good(1956)の子孫が繁栄している8号族。この牝系からZilzal(1986)、Polish Precedent(1986)、オウインスパイアリング(1986.4.30)、ポッセ(1977.5.15)などが輩出されています。キングヘイローの曾祖母Squander(1974)の仔にラシアンルーブル(1980)がいます。

キングヘイローの4代血統構成&4代父系の活性値&4代父系の分枝状況
母父 祖母父 曾祖母父
ダンシングブレーヴ
(Northern Dancer系)
Halo
(Hail to Reason系)
Sir Ivor
(Sir Gaylord系)
Buckpasser
(Tom Fool系)
父の活性値 母父の活性値 祖母父の活性値 曾祖母父の活性値
0.75
(11歳時交配)
1.75
(15歳時交配)
1.25
(13歳時交配)
0.50
(10歳時交配)
父の分枝状況 母父の分枝状況 祖母父の分枝状況 曾祖母父の分枝状況
Nearcoの4代孫 Turn-toの孫 Turn-toの孫 Phalarisの4代孫
(アメリカン・ダミー)
キングヘイローのB&B理論的総括
8代残牡先祖数 マジック数 潜在能力指数 闘志
12/128 0 12 Northern Dancer有
Native Dancer有
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 何番仔?
Halo
(Almahmoud)
3.25 底力あり
(No.8-H)
4番仔

※潜在能力は数値が少ないほど大きいことを示しています。

第60回桜花賞(芝1600m) 4月9日 阪神 晴・良 勝ち馬 チアズグレイス(勝時計1分34秒9)

チアズグレイス   牝   鹿毛   1997.3.30生   Family No.21-A チアズグレイスの4代血統表
父サンデーサイレンス(1986.3.25)  母チアズフラワー(1990.4.24)  母の父Al Nasr(1978)

父はサンデーサイレンス。日本馬産界を席巻するウルトラスーパーミラクルサイアー。中島理論的にはその父Haloの16歳時交配生産馬。つまり「0の遺伝」を父から受けた名馬となります。チアズグレイスの桜花賞制覇により5大クラシック完全制覇となりました。チアズグレイスはサンデーサイレンス産駒13頭目のGIホースです。

母チアズフラワーは持込馬。現役時代は未勝利。3番仔としてチアズグレイスを輩出しました。

チアズグレイスの配合面の特徴としては、母チアズフラワー内でNorthern Dancerのクロスがなされていることでしょうか。母父Al Nasr(1978)がその父Lyphard(1969)の8歳時交配による0遺伝馬のため、祖母父Northfieldsの持つNorthern Dancerは0化されます。また母系に目を転じると、「4代母と曾祖母」および「祖母と母」の料的遺伝値の受け渡しが8歳時の「2.00(もしくは0.00)」となっています。チアズグレイスの頑健そうな馬体を見ていると、おそらくは2回の世代交代が2.00の数値で行われたと考えます。この2回の世代交代が良馬の輩出された土壌になったのでしょう。

牝系は曾祖母Dumka(1971)から良馬が輩出されている21号族。Dumka自身も仏1000ギニー(GI)勝ちと活躍しました。Dumkaの主な産駒に英2000ギニー(GI)の勝ち馬Doyoun(1985)−1999年の欧州古馬チャンピオンDaylami(1994.4.20)の父−、ハンガーフォードS(英GIII)の勝ち馬Dalsaan(1977)、コーク&オラリーS(英GIII)の勝ち馬Dafayna(1982)、ゴードンリチャーズS(英GIII)の勝ち馬Dolpour(1986)など。なお、桜花賞2着のマヤノメイビー(1997.4.27)も同じく21号族で、さかのぼればWagtail(1818)という牝馬が両馬の先祖馬となります。

チアズグレイスの4代血統構成&4代父系の活性値&4代父系の分枝状況
母父 祖母父 曾祖母父
サンデーサイレンス
(Hail to Reason系)
Al Nasr
(Northern Dancer系)
Northfields
(Northern Dancer系)
Kashmir
(Hyperion系)
父の活性値 母父の活性値 祖母父の活性値 曾祖母父の活性値
0.50
(10歳時交配)
0.75
(11歳時交配)
1.00
(12歳時交配)
1.75
(7歳時交配)
父の分枝状況 母父の分枝状況 祖母父の分枝状況 曾祖母父の分枝状況
Nearcoの5代孫 Northern Dancerの孫 Northern Dancerの仔 Whaleboneの12代孫
チアズグレイスのB&B理論的総括
8代残牡先祖数 マジック数 潜在能力指数 闘志
15/128 1 11.25 Northern Dancer0化
Native Dancer0化
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 何番仔?
Kashmir
(Queen of Speed)
5.75 活力あり
(No.21-A)
3番仔

※潜在能力は数値が少ないほど大きいことを示しています。

第60回皐月賞(芝2000m) 4月16日 中山 曇・稍重 勝ち馬 エアシャカール(勝時計2分1秒8)

エアシャカール   牡   鹿毛   1997.2.26生   Family No.4-R エアシャカールの4代血統表
父サンデーサイレンス(1986.3.25)  母アイドリームドアドリーム(1987.3.31)  母の父Well Decorated(1978)

父はサンデーサイレンス。前週の桜花賞に引き続き皐月賞も産駒が勝利を収めました。皐月賞の勝ち馬は初年度のジェニュイン(1992.4.28)、2年度のイシノサンデー(1993.5.29)についで3頭目。エアシャカールはサンデーサイレンス産駒14頭目のGIホースです。

母アイドリームドアドリーム(I Dreamed a Dream)は輸入繁殖牝馬。その血統構成は優秀で父Well Decoratedが0交配、祖母父Ribot(1952.2.27)が0交配を与えています。さらにNorthern Dancerが血統内に全く含まれておらず、Native DancerはWell Decoratedの0交配により0化されています−Well Decoratedの母父がNative Dancerの直孫Majestic Prince(1966)のため−。エアシャカールは母が不受胎後の3番仔となります。「不受胎後」というのが割とキーワードで、連年馬産が当たり前となってしまった現在、空胎に準じる形で母のお腹を空けるということがかえってメリットを生み出します。

牝系は5代母Golden Trail(1958)から活躍馬が輩出されている4号族。牝系近親にブライアンズタイム(1985.5.28)、サンシャインフォーエバー(1985.3.14)、キングオブダービー(1975)、Ryafan(1994)、Andover Way(1978)、Gleaming Light(1966)などがいます。また、エアシャカールの半姉にクイーンS(GIII)の勝ち馬で第59回オークス(GI)2着のエアデジャヴー(1995.3.27)がいます。

エアシャカールの4代血統構成&4代父系の活性値&4代父系の分枝状況
母父 祖母父 曾祖母父
サンデーサイレンス
(Hail to Reason系)
Well Decorated
(Bold Ruler系)
Gleaming
(Herbager系)
Ribot
(St.Simon系)
父の活性値 母父の活性値 祖母父の活性値 曾祖母父の活性値
0.50
(10歳時交配)
0.00
(8歳時交配)
1.50
(6歳時交配)
0.00
(16歳時交配)
父の分枝状況 母父の分枝状況 祖母父の分枝状況 曾祖母父の分枝状況
Nearcoの5代孫 Nearcoの4代孫 Whaleboneの13代孫 Eclipseの15代孫
エアシャカールのB&B理論的総括
8代残牡先祖数 マジック数 潜在能力指数 闘志
8/128 2 4.00 Northern Dancer無
Native Dancer0化
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 何番仔?
Gleaming
(A Gleam)
3.25 底力あり
(No.4-R)
3番仔
(不受胎後)

※潜在能力は数値が少ないほど大きいことを示しています。

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